No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
ところどころに、朝陽のオレンジ色が転がっている歩道を、ふたり、手を繋ぎながらゆっくりと歩く。

律さんの首元にはお決まりのカメラが下がっている。

時折、思い出したようにカメラを向けるのは、ひとけのない、ふたりの思い出のカフェや、あの林檎の花壇がある公園。

橘さんのお店の『365』

ふたりの、ふたりきりの思い出が溢れる道をただ、ゆっくりと歩く。

当たり前のように繋がれている、律さんの左手と私の右手。

初めて手を繋いだあの日から、ずっと、ずっと。

ぬくさを優しさを、思いやりを楽しさを。

マイナスな感情や、切なさ、哀しみまでも。

すべての感情を分けてくれる左手。

その左手には、虹が架かるおそろいのシルバー。




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