No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
マンションに帰り着いて、手を洗ってうがいをしたら、入れ替わるように洗面台にやってきた律さん。

「少し疲れたでしょう?ベランダで風に当たってて。何か飲み物持っていくから」

そんな風に言ってくれた律さんに甘えて、一足先にベランダへ。

おだやかに吹く風が気持ちいい。

「お待たせ」

律さんの声に振り返る。

氷が入ったグラスを片手に2つ持っている律さんは、ひとつを私に手渡してくれた。

そしていちど、ゆるく笑って、

「たまにはいいでしょう?ね?」

背中に隠していた片手には、1缶の缶ビールが握られている。

「今日はもう、あなたとゆっくり過ごそうと思って」

いたずらっコの目が可愛らしい。

「朝からビールなんて、シアワセ、です」

ふたりで、ふふふ。笑い合う。

思いのほか大きく鳴った、プルタブを開ける音に、悪いことをしている気分になって少し肩をすくめたら、律さんも同じように肩をすくめていて、こんどはふたりで含み笑い。






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