No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
ハナウタを歌いながら、正面玄関を抜ける。
あいにく、この間降った雨のせいで、ロッカーに置き傘はないけれど、律さんが来てくれるから、大丈夫。
律さんの姿はまだないけれど、愛おしいひとを思いながら聞く、雨音は優しい。
「桜井さん!傘ないんですか?」
自動ドアを抜けてきた、林くんが私に駆け寄ってくる。
「…あ、今、旦那さんが…」
「俺、傘あるんで、送って行きます!!」
言いかけた私の言葉を遮って、言った林くんはその勢いのまま、急に私の手首を掴んだ。
…熱い…、
思った瞬間、押し寄せてくる黒い記憶に飲み込まれそうになって、強く目をつむった。
暗い目の奥に、急に光が射し込んだ。
「彼女、オレのだから、気安く触るのやめてもらえる?」
聞きなれた声が耳元で聞こえて、律さんの腕の中に抱き締められていることを、知る。
・
あいにく、この間降った雨のせいで、ロッカーに置き傘はないけれど、律さんが来てくれるから、大丈夫。
律さんの姿はまだないけれど、愛おしいひとを思いながら聞く、雨音は優しい。
「桜井さん!傘ないんですか?」
自動ドアを抜けてきた、林くんが私に駆け寄ってくる。
「…あ、今、旦那さんが…」
「俺、傘あるんで、送って行きます!!」
言いかけた私の言葉を遮って、言った林くんはその勢いのまま、急に私の手首を掴んだ。
…熱い…、
思った瞬間、押し寄せてくる黒い記憶に飲み込まれそうになって、強く目をつむった。
暗い目の奥に、急に光が射し込んだ。
「彼女、オレのだから、気安く触るのやめてもらえる?」
聞きなれた声が耳元で聞こえて、律さんの腕の中に抱き締められていることを、知る。
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