No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
「で?これは、なに?」

重ねられた質問に、

「…あー、あの…、だいぶ邪魔になってきて…」

「で?」

しどろもどろの私の答えにも、冷静な返事を返す律さん。

私の手に握られているハサミをそっと取り上げた。

「まったく。前髪を切るときは、オレが切るって約束したでしょう?」

あーあぁ、ほら、がったがたになっちゃって。あなたまさか自分が器用だとでも思ってるの?大きな勘違いだから!!

ぶつぶつと言いながら、私の前髪にハサミをいれていく律さん。

前に自分で前髪を切ったら、盛大に失敗して律さんが切り直してくれた。

失敗した後に切り直したからかなり短くなってしまった前髪。

でもなんだかそれもまた、嬉しくて。

律さんのぬくもりが残る前髪が、誇らしかった。









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