No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-
「…詩さん。詩さん」

優しく呼ばれる声。

頬やおでこに触れる手のひらは、目を開けなくてもわかる、律さんの手のひら。

詩さん。

再度呼ばれて、ゆっくり目を開けた。

「良かった。熱下がったね。最近忙しそうだったから、疲れてたんでしょう?」

黒いエプロンを着けた律さんが、私を覗き込んでいる。

大丈夫?具合が悪いときは、ちゃんと言いなさい。わかった?あなたに何かあったら、オレは生きていかれないんだから。

諭すような言葉からも伝わる、優しさ。

素直に頷いたら、

よしよし。

言いながら、頭を撫でてくれた。




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