雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
神崎さんは、一気に私のコップのビールを飲み干した。
「そ、そうなの。それは申し訳なかったね。気にすることはないんだよ。さっ、朝比奈さん、その分沢山食べてください」
神崎さんは、私をかばってくれた。
そして、担当の人とお酒を飲みながら話をする神崎さんは、日頃見ない姿でとても新鮮だった。

「はぁ、疲れた・・・」
「すみません、私の代わりに」
「いや、途中から飲んだふりして、あまり量は飲んでない。相手に沢山飲ませたから、相手の方が潰れてただろ?」
「そう言えば・・・」
「俺、お酒は強い方だから。それに接待ではあんまり飲まないんだよ。朝比奈、お腹空いてないか?」
「いえ、私は大丈夫です。あっ、ちょっと欲しい物があって、コンビニ寄ってホテル戻ります」
「1人で大丈夫か?」
「はい、分からなくなったらナビがありますし」
「そう遠くはないだろうけど、気をつけろよ」
「はいっ」
そこで神崎さんと別れて、コンビニへと向かった。

「さて・・・ここはどこに来たのかなぁ・・・確かこっちをぐるっと回って・・・」
少し離れていたコンビニに着いたまでは良かったけど、来た道を戻ったつもりが、さっきみた風景とは違う通りに出ていた。
よしっ、ここはナビに頼ろう。
でも、ナビの通りに歩いても、なかなか元来た道に辿り着かない。
「こんなに遠かったかなぁ・・・」
ナビの道しるべは、まだまだ続いている。
おかしい。
そんなに遠くなかったはずだけど。
「ちょっと待って、やだっ、ホテルの名前間違ってるじゃない」
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