雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
改めて、ナビに入力し直して歩いて行く。
確かあっちで、その少し先辺りなんだよなぁ、でも、ここ、どうやって向こう側に行くのよ・・・
歩いて、近くに行ったかと思うと、ズレている・・・
「どうしよう・・・わからない」
その時、電話が鳴り、表示された名前は、神崎さんだった。
「朝比奈、部屋に無事着いてるか?」
「神崎さん・・・」
泣きそうな声で神崎さんの名前を呼んだ。
「どうした?」
神崎さんは慌てている様子がわかるくらい動揺していた。
「道に迷いました」
「何で迷うんだよ。ナビがあるだろ?」
ため息交じりの神崎さんが、呆れている様子が分かる。
「そのナビで余計に迷いました」
「お前、どんだけ方向音痴なの?」
「昔っからでして・・・」
「近くに聞くような人はいないのか?」
「車ばかり通ってます」
「ナビの現在地の住所教えて」
現在地の住所を神崎さんに伝えると
「そこ、動かずに待ってろ。直ぐに迎えにいくから。何かあれば電話しろ」
「はい」
どんなに罵声を浴びようと、これで無事帰れる。
神崎さんが来てくれる。
そう思うだけで心強くなった。
私は電話を握ったまま、神崎さんが迎えに来てくれるのを待っていた。

しばらくすると、1台の車が目の前で止まり、声を掛けられた。
「彼女、どこまで行きたいの?俺が乗せてあげるよ」
「いえ、もうすぐ待ち合わせしてる人が来ますから」
どうしよう、怖い。
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