雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
内勤の日は、神崎さん以外の人のデータ入力や事務補助をしている。
定時前になって、今日は早く帰ろうと思っていたら、長井さんから声を掛けられた。
「朝比奈、これ明日の朝までに仕上げないといけないんだが、急に外出することになって、定時なのに悪いが、頼んでいいか?」
「はい、いいですよ」
仕方ない。今日は残業しよう。

「お疲れ様でした」
あっという間に時間が経ち、気がつくと殆どの人が帰っていた。
分からない所が聞けないから、手が止まり、余計に時間がかかる。
そう思っていると、神崎さんが外出から帰って来た。
「お疲れ。朝比奈、まだ残ってるの?」
「長井さんに急ぎの仕事を依頼されまして・・・」
「どれ?」
私の手元にある資料を見て、私のパソコンを見ていた。
「あと少しか・・・俺、手伝うから貸して。朝比奈はこの資料の数字、入力して」
手際よく作成していく神崎さんの横で、私は神崎さんに言われた仕事をしていた。
「これでいいだろう」
神崎さんはあっという間に終わらせていた。
私1人なら、あと1時間はかかっていたかもしれない。
「神崎さん、ありがとうございました」
「ほんと長井さんは無理押しつけて、何考えてるんだよ」
神崎さんは自分の鞄から資料を取り出して、机に置いていた。
「もしかして、今からお仕事ですか?」
「あぁ、今日の打ち合わせ、ちょっとまとめたくてな」
「すみません。私の仕事、先に手伝ってもらって」
「いいから、早く帰れ」
「でも、何かお手伝いすることが・・・」
「無いよ。それに俺1人の方が早い」
せっかく優しいと思ったのに・・・
「遅いから気をつけて帰れよ。お前はスキがあるからな」
「大丈夫ですよ。ありがとうございました。お先に失礼します」
神崎さんと一緒に仕事をするようになって、分かったことがあった。
私をいつも助けてくれている。
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