雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
神崎さんがご主人に声を掛けた。
「家内が疲れてしまって、今日は泊まろうかと思ったのですが、なかなか空きがなくて」
横を見ると、奥さんは疲れている様子で、顔色も悪かった。
「もし、宜しければ、私達の1部屋をお譲りします。それなら、問題ないでしょうか」
神崎さんがフロントの人に声を掛けると
「事情が事情ですし、お客様が宜しければ・・・」
神崎さんはフロントの人に、自分のカードキーを渡した。
とんとんと話が進む中、私はご夫婦のことばかり考えて、ほっとしてたけど、ふと現実に引き戻された。
ちょ、ちょっと待って。ということは、今日は私と神崎さんと1つの部屋で寝るのよね。
「朝比奈、カードキー貸して」
「あっ、はい」
私は自分のカードキーを渡すと
「行くぞ」
そう一言だけ言って、エレベーターへと向かった。
「早く来いよ」
私は慌ててエレベーターに乗り込み、どきどきしていた。
今まで男の人と一緒に部屋で過ごすことなんてなかったから、突然の事に戸惑っていた。
「朝比奈との出張は、やっぱりハプニングがあるよな」
私を見下ろす神崎さんは小さくため息をついていた。

部屋に着いて、部屋の中に入ると、神崎さんはさっさと中に入っていったけど、私はどうしていいかわからず、入り口で立っていた。
「朝比奈、俺が何かするとでも思ってるの?嫌ならどっか店に行って一晩過ごすけど?」
「いえ、大丈夫です」
< 20 / 96 >

この作品をシェア

pagetop