雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
「ねぇ、彼女1人?」
後ろ歩きする男の人に声を掛けられた。
「いえ、1人じゃないです」
「だって、1人だろ?仕事の帰り?なぁ、一緒に遊ぼ?」
どうしよう。風景を見てて、神崎さん、見失った。
「すみません、急いでいますので」
「そんなこと言わずに、遊ぼっ!」
私の前に立ちはだかる。
どうしよう。
「すみません、俺の連れなんで」
私は手を引っ張られ、その男の人から引き離された。
「神崎さん・・・」
「さっき言ったばっかりだろ?俺から離れるなって」
「だって・・・」
「全くお前は・・・ほんと、目が離せないな」
私は、その握られた手に、胸が高鳴り、顔が赤くなった。
「その危なっかしさ、俺の前だけにしとけよ」
優しく微笑む神崎さんに、胸の鼓動が慌ただしく弾む。
手を繋いだまま、2人で駅まで歩き、駅に着いた時、神崎さんの手が離れた。
その手が離れた瞬間、なんだろう、この気持ち。
もっとその手を離さず、繋いだままでいたくなった。
「どうした?」
「いえ、何でも」
仮の彼氏と言われてから、意識してしまった。
ううん、もっと前からかもしれない。
ただ、自分の心の中を見ないふりしていただけ。
神崎さんを好きになっていたことを。
< 28 / 96 >

この作品をシェア

pagetop