雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
「美咲、ちょっと」
「はい」
先に行く神崎さんを見送るために、玄関に向かった。
「行ってくるよ」
口づけを交わすと
「美咲、何か言うことないの?」
「行ってらっしゃい、神崎さん」
「恋人同士なのに、俺だけ美咲なの?」
「・・・朝陽さん、行ってらっしゃい」
「やっぱり、名前で呼ばれると嬉しいよな。じゃあ、また後で」
口づけを軽くした後、抱きしめられて、次は激しく唇を奪われる。
「そんなうっとりした目で見られると、いつまでも仕事行けないなぁ」
「だって・・・」
「会社では出来ないからな」
もう1度、軽く口づけをして、私の頭を撫でて、出掛けて行った。

しばらくして自分の服に着替えようと、寝室に入り、ベッドを見た時、昨日の事を思い出して恥ずかしくなった。
「私、朝陽さんと恋人同士なんだ・・・」
もらった鍵を見つめながら、余韻に浸っていた。

昼休憩に会社に行くと、朝陽さんは席に座っていて、私は胸をときめかせながら席へ向かった。
「お疲れ様です。神崎さん、お昼行かないんですか?」
「あぁ、お疲れ。もう行って来た。昼から会議だからな。」
朝陽さんは、一瞬私に目を向けたけど、直ぐにパソコンに向かっていた。
今までと変わらないのに、本当の朝陽さんを知ってしまった私は、そっけない態度に落ち込ちこみながら、パソコンを起ち上げ、仕事の準備を始めた。
仕方ない、職場では先輩と後輩だ。
「朝比奈」
「はい」
「そんな顔するな」
「えっ?」
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