雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
そう思いながらも、会議が始まりそうだったから、私は会議室を出て、自分の席に戻っていった。

津田先生は、朝陽さんと同じく背が高く、端正な顔立ちで、二重で彫りが深く、朝陽さんが爽やか系なら津田先生はワイルド系だ。
今週は、会議以外では、他の部署と意見交換したり、本社の営業担当と一緒に客先に行ったりと、朝陽さんも津田先生もほとんど席にいなかった。
「朝比奈これ頼む」
その言葉だけが、朝陽さんから掛けられる声だった。

その週の金曜日の夕方。
「前に言ってた今日の歓迎会は、参加出来る人は参加してくれ」
長井さんが営業部の人に声を掛けていた。
「朝比奈も行こうよ。あの頃は先生だから一緒に行けなかったけど、今はいいだろ?」
津田先生に声を掛けられた。
「私、お酒飲めないし、それに・・・」
「飲まなくていいよ。久々だから、ねっ!」
「・・・わかりました」
今日は着替えも持って来て、朝陽さんのところに行く日だから、朝陽さんも一緒なら大丈夫だろう。

お店に着くと、私は、朝陽さんが左側に、津田先生が右側と、間に挟まれて座る席になった。
「朝比奈、始めの1杯だけ付き合え」
長井さんにビールを注がれ、私の目の前に置かれた。
どうしよう・・・
そう思っていると、朝陽さんが手を伸ばしてくれた。
やっぱり朝陽さんだ。
と思った時、津田先生が私のコップを取って「俺が朝比奈の分、飲みますから、許してやってください」
そういって、私のビールを飲み干した。
あの時と同じだ・・・
朝陽さんと出張に行った時の事を思い出していた。
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