雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
【強がる俺と憶病な俺 ~朝陽】
「お疲れ」
「津田・・・美咲と買い物に行ったんじゃなかったのか」
「あぁ、行って来たよ。途中で九州から電話があって、取り急ぎ調べることがあってな」
津田は、共有パソコンを開いて仕事に取り掛かった。
今日のことを聞きたい。
一体、2人の間でどんな会話がされたんだろう。
「気にならないのか、俺が朝比奈に告ってないのかとか」
津田が俺の気持ちを察するように、質問してきた。
「別に」
「余裕だな。朝比奈、学生時代の俺とのこと、思い出していたよ」
自分の知らない、美咲と津田の過去の時間。
否が応でも嫉妬心に苛まれる。
「朝比奈に聞いたと思うけど、今週の金曜日に九州に戻るから」
「津田がいないと回らないのか」
「結構、忙しくなってるからな」
しばらく黙って、仕事をしていた。
津田が九州に電話した後、仕事が終わったのかパソコンを閉じた。
「なぁ、神崎」
俺は、手を止めて津田を見た。
「俺、昨日帰ってから、自分の気持ちより、同期のお前を応援しないといけないのかなと、思ったんだけどさ・・・今日、朝比奈と一緒に過ごしてわかったよ」
津田は真剣な目で俺を見て
「俺、朝比奈のこと、やっぱ好きだわ。奪ってもいいんだよな?」
その言葉に胸が締め付けられた。
「いいわけないだろ!」
「神崎、言ったよな。奪われた時は奪われた時だって」
「それは・・・」
「売り言葉に買い言葉だってくらい、分かってるさ。仕事は仕事、同期で仲間であることも変わりない。ただ、男としては別だ。俺はあの時、朝比奈に告白出来なかった、先生が終わる日のような後悔はしたくない」
津田はそのまま帰って行った。
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