雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
【私の心、ここにあらず】
津田さんが金曜日に九州に帰ることになったから、津田さんのサポートの仕事も今週で終わりだ。
「朝比奈、本社にはいつでも来れるし、これからは連絡してくれたら、いつでも教えるけど、付きっきりで教えられるのは、今週だけだから、俺のサポートについて」
「はい、お願いします」
「今週だけなのが嫌なら、九州に来てくれたらいいけど?」
「嫌ですよ、転勤なんて」
「そう意味じゃないよ」
そういいながら、頭をポンと叩いて、コピー機に向かって行った。
「津田、ちょっと」
津田さんが他の支社の人に呼ばれて、私は自分の席に戻った。
そうだ、先に朝陽さんの仕事片付けないと。
朝陽さんに頼まれていた仕事を済ませて、声をかけた。
「神崎さん、この資料、出来ました」
「あぁ、ありがとう」
朝陽さんは、資料を受け取って、何か言いたそうだった。
「神崎さん?」
朝陽さんが何か言いかけた時
「神崎、ちょっと打ち合わせいいか」
「あっ、はい」
他の支社の人に呼ばれて、朝陽さんは打ち合わせに入ることも多くなってきた。
私の顔を一旦見た後、会議室へ入って行った。

水曜日、津田さんと一緒に過ごせる時間も少なくなって来た。
「朝比奈、九州に帰ったら、溜まってる仕事に追われるから、こっちの事はこの2日で終わらせたいんだ。協力してくれる?」
「いいですよ」
特に急ぎの仕事もなかったし、津田さんが長井さんに報告したら
「そうしてくれ」
長井さんの承認も得て、私はずっと津田さんについて仕事をしていた。
朝陽さんの隣にいれないのは寂しい。
でも、午後から朝陽さんは外出し、直帰になっていた。
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