雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
残業して遅くなり、津田さんは私を駅まで送ってくれることになった。
「朝比奈さ、もし、俺が先生として最後の日、告白してたら、そのまま付き合ってた?」
その言葉に、あの頃の自分の感情を思い出していた。
あの時は、憧れの好きだったけど、きっと先生だった津田さんに告白されていたら、受け入れていた。
「そうですね、先生と付き合っていたと思います」
「へぇー、そうなんだ・・・」
津田さんが私に近寄ってきて
「やっぱり先生が終わったあの日、俺のものにすれば良かったよ」
真剣な眼差しで私をじっと見て、朝陽さんみたいなことを言い出した。
「か、からかうのは止めてください」
いくらからかっていると分かっていても、言い方が朝陽さんと重なる。
朝陽さんに言われているみたいで、恥ずかしくて顔が赤くなった。
「今、誰を想像したの?」
手を掴まれて、津田さんの顔が曇っていた。
「津田さん・・・」
真剣な目に見つめられた後、津田さんがにこっと笑って
「なんてね、神崎に似てた?朝比奈やっぱ可愛いな」
「もーっ!」
私は津田さんの腕を叩いて、2人で歩いた。
「明後日の朝帰るからさ、明日が一緒に仕事できる最終日だな」
「あっという間でしたね。でも会えて嬉しかったです。まさか会えるなんて思わなかったから」
「ほんとだな、俺も会えて良かったよ」
「ちょっと寂しいですね」
「ちょっとだけなの?」
「そう、ちょっとだけです」
「そっか、神崎がいるもんな」
「はい」
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