雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
まさか、現実になるとは思ってもみなかった。

「皆さん、お世話になりました」
津田は、皆に挨拶して、俺の横にきた。
「ちょっと顔貸して」
津田が怒ってる顔、初めて見た。
俺は、会議室に入る津田に付いて行った。

「朝比奈のことだけど」
「美咲は合鍵を置いていったよ。お前の勝ちだ」
「お前、何もわかってないのな。休んでるから、風邪ひいたかと思って電話したら、泣いてたぞ。昨日のこと」
「はっ?」
「昨日のことはお前の誤解だ。俺が一緒に帰ろうって言ったら、私は濡れて帰りますって、雨に濡れて帰ったよ」
「昨日、一緒に帰ったんじゃなかったのか?」
「かなり降ってきたから、駅まで送るって何度も傘に入れようとしたんだけど、頑なに、私は走って帰るって聞かなくてさ。どうしてって聞いたら、相合傘するのはお前とだけだって」
「美咲・・・俺、誤解してた。てっきりあの後2人は」
「それとさ、俺、さっき告白した。こんな時にごめんって。でも、お前のことで泣いてる朝比奈さえ、愛おしくなった。俺は寂しい思いさせないからって」
「・・・」
「で、さっきフラれた」
「えっ?」
「自分が心から愛しているのは、今もこの先も、ずっと神崎だけだってさ」
そんなことを・・・
「嫌われても、神崎が許してくれる日が来るまで待つって。好きな人にそこまで言われて、俺、傷心中だよ。神崎。朝比奈のこと大切にしろよ。じゃないと、本社へ異動願い出して、次こそ全力で奪うぞ。いいのか?」
「ダメだ。誰にも渡したくない」
「素直になれ。その気持ち、そのまま伝えてあげろよ。弱いところを見せても、朝比奈はお前から離れないさ。じゃあ、またな」
津田は、俺の肩を叩いて、部屋を出て行った。

美咲に今すぐ会いたい、その気持ちが抑えきれなかった。
「長井さん、すみません、俺、急用が出来て、午前半年休しますから」
「神崎!会議が、」
「すみません!後お願いします」
俺は鞄を持って、急いで美咲の家へ向かった。
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