天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 ディートハルトの乗った馬車を見送り、ほっと息をつけば――幼い子には不似合いな心配そうな色を目に浮かべたミリエラがこちらを見上げている。

(……ミリエラも、似たようなものなのかもしれないな)

 年齢に見合わない落ち着きを見せるディートハルト。年齢より、はるかにいろいろと考えている様子を見せるミリエラ。

 母はもう会えないとはいえ、父からも見放された娘がどれだけ寂しい思いをしてきたのか。そして、寂しい思いをさせてしまったのは誰なのか。

 思わず、手を伸ばして抱き上げる。

「パパに抱っこされるのは好きよ」

 それなのに、ミリエラはそう言って笑うのだ。

 彼女の無邪気な微笑みに、ますますいたたまれない気持ちになる。「ミリィ」と愛称で呼ぶことすらまだできないくせに。



 * * *

 

 ミリエラの友人ということになったディートハルトは、時間が合えば、侯爵邸を訪れる。何日も前から先ぶれの者を出すのではなく、本当に気楽にやってくる。

 今日は、午前中から遊びに来たので、庭に敷物を敷いてピクニックをしていた。ミリエラが生まれるとわかった時に母が作らせた水遊び場があるのだ。
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