天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「ほんと? ありがとう、ディー!」

 カークはますますふくれっ面になったけれど、すぐに気を取り直したようだ。

「じゃあ、材料をすりつぶすのは俺が手伝ってやる。ミリィの力じゃ大変だろ」

「――うん!」

 彼らと過ごす時間は、こんなにも温かくて、優しい。

 前世では知らなかったぬくもりに、胸がいっぱいになった。

「カークは、僕と剣の練習をしようよ」

 ディートハルトは、そうカークを誘う。今度膨れっ面になったのはミリエラだった。

「ミリィは、剣は使えないのに……!」

 剣の使い方くらい学んでもいいのではないかと思うのだが、この世界では、女性は剣を学ばないと決まっているらしい。

 ふくれっ面になったミリエラを、友人ふたりがせっせとなだめる。ディートハルトは傍らにあったケーキを差し出し、カークはチョコレートを差し出している。

 そんな子供達の様子を、少し離れたところから見守る大人達がほほえましそうな目になったのは、まったく気づいていなかった。



 * * *

 

 ディートハルトが遊びに来るようになってから、ひとつだけ困ったことが起きた。

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