天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 糸に塗布してから布にすることにより、マナを流し込んでも問題ない。ミリエラの発想力にとことん付き合った結果が、これだ。

「ただいま、パパ!」

「楽しかったか?」

「うん。ミリィはとても楽しかったよ。でも、屋台のおじさん達が喧嘩になってちょっと大変だった」

 頭の高い位置でふたつに結わえた髪が勢いよく跳ねるほどぶんぶんとミリエラは首を振った。

 今まで屋敷に閉じ込められていたミリエラに、少し外の空気を吸ってもらおうと思っていたのだが、ジェラルドの想像以上に楽しかったようだ。

(……子供は、日々成長していくというのは本当なんだな)

 ジェラルドの目の前で、床に寝そべったミリエラは、スケッチブックに何やら書きつけている。

「ねえ、パパ。保冷布にこうやって刺繍をしたらどうなるかなぁ? 可愛い刺繍が入っていたら、皆欲しくなると思うの」

 年齢に見合わない落ち着きと、視野の広さを見せるミリエラであっても、絵心までは持ち合わせていないらしい。

 スケッチブックに描かれたぐにゃぐにゃした物体はなんなのか、ジェラルドには理解できなかった。

「ミリエラ、これは何……かな?」

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