天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「やだな、パパ。お花でしょ! 黄色いのとピンク。薔薇の精霊なんですけど!」

 自分の絵が他人には理解できないものであるということが、ミリエラには不服だったようだ。ぷくっと頬を膨らませて、スケッチブックをお腹側に向けてしまう。

「……ごめんごめん。それ、もう一度見せてくれるかな?」

 言われてみれば、手足と思われる部分――それに、ふわふわとした花弁、だろうか。その先から足が出ているということは、花弁がスカートだろうか。

「ミリィ、このままでは刺繍にするのは難しいと思う。私が、描き直してみてもいいかな」

「難しい?」

「うん。王宮の職人ならできるかもしれないけど、これだけ細かく刺すのは手間がかかる――もう少し簡略化した方が、皆の手に届きやすい値段に抑えられるはずだ」

「皆、欲しい?」

 パッとミリエラが目を輝かせる。そうしている様は、まさしく年頃の女の子だった。

「もちろんだとも――少し、待っていなさい」

 ミリエラが気合を入れて描いたであろうことは、容易に想像できる。

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