天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました！

「マナの保有量が多い者が、この胸当てに手を当て、この治療着を身に着けた殿下のマナを外側から揺らします。そして、このブラックドラゴンの牙をたどり、全身に向けて発します――そして、それを左右の腕に集約していきます」

　マナを流しやすいミスリルを治療着に貼ってあるのはそのためだ。
ジェラルドの説明を聞いたディートハルトは何度も首を縦に動かした。今の説明である程度納得したらしい。

「問題はあるのか？」

「慎重に行いますが、痛みを覚えることがございます。その時は、こちらで殿下に流すマナの量を調整いたします。時間はかかりますが、領地内の者、百人がマナを使えるようになりました」

「わかった。やろう」

「ですが！」

　ディートハルトの世話係が顔色を変えた。

「痛みを覚えるなど、もってのほかです、殿下。もし、殿下のお身体に何かあれば」

「ヴィルギル――僕の結論に文句を言うのか？」

「いえ、殿下。危険を冒すわけにはいかない、と」

　ヴィルギルと呼ばれた世話係は、ディートハルトが最初にこの屋敷を訪れた時から常に側にいた。ディートハルトの身を、本当に案じているのだろう。