天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「ヴィルギル殿。万全の注意を払って治療をいたします」

「それに、マナを使うことができれば、僕も王宮に戻ることができるだろう――帰りたいんだ」

 そう告げた時のディートハルトの真剣な声。

 その声音に、ヴィルギルは胸を突かれたような表情になった。

 いくら王族として厳しく育てられ、年齢の割に大人びているとはいえまだ七歳。普通なら、両親が恋しくてしかたのない頃だ。

 今まで一度もそれを口にしなかったのは、ディートハルトがその立場を理解していたからのこと。

「かしこまりました。殿下――では、私はお側で見守らせていただきます」

「かまわないな、侯爵」

「もちろんですとも」

 本来は、ミリエラの方がマナの扱いには長けているのだが、まさかミリエラに治療させるわけにはいかない。
 ジェラルドみずから、ディートハルトの治療を行うことになった。

 痛みを覚えないよう、慎重に、少しずつ。

 マナがきちんと流れているかは、治療着の色を見ればわかる。

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