天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 ミリエラは客人が来ているのにはまったく気づかなかったけれど、当時暮らしていた別館と本館は距離があるから、よほどの騒ぎにならなければ別館までは伝わらない。

「ミリエラに会わせたら、連れていかれてしまうと思ったんだ――ここにとどまるより、都で暮らした方がミリエラのためになるだろうからね。私は愚か者だ――自分の側にいると不幸になると思っていたくせに、君を手放すことができなかった」

「ミリィ、怒ってないよ」

 膝の上で背を伸ばし、そっとジェラルドの頭を撫でてみる。

 たしかに、ジェラルドの行動は誉められたものではなかった。周囲の人を遠ざけ、自分の殻に閉じこもった。

 ミリエラに前世の記憶がなく、ニコラ家族がいなかったら、ミリエラは歪んで成長してしまったかもしれない。

 だが、幸か不幸かミリエラは前世の記憶があった。それも、今の父親とさほど年齢の変わらない成人女性としての記憶だ。

 その記憶があったからこそ、それが父なりの思いやりであったこともちゃんとわかっている。父のことを愛おしく思っても、嫌だと思うことはない。

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