天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 精霊達が、ミリエラを気遣ってくれているのがよく伝わってきているから。
ピンクの薔薇でできたアーチの間を走り抜け、声の導く方へと向かう。

『娘、我を呼べ』

 そう耳の奥から話しかけてくる声は、誰のものなのだろう。頬を撫でていく優しい風。

「呼ぶ、誰を?」

『我を呼べ』

「――それなら、来て、ここに」

 両手を差し伸べ、そう呼びかける。

 そのとたん、ミリエラの目の前に現れたのは、美しい一頭の猫だった。真っ白な長い毛並み、優美な尾。生き生きとした青い瞳。

 ミリエラを背に乗せられそうなほどに大きい。興味なさげにミリエラを見て、ちろりと舌を出した猫は鼻先を舐めた。

(……なんの精霊なのかな、この子)

 ミリエラの心の声が聞こえたらしい。猫は不満そうに尾を振った。

『我は"子"ではないぞ』

「人の心を勝手に読むのはやめようか――で、あなたは何の精霊なの?」

 半眼になったミリエラは、両手を腰に当てて背中をそらせる。舐められてはいけないと本能的に思った。

『我か? 我は風の精霊だ』

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