天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 風の精霊もまた、ミリエラの前でえへんと胸を張る。そうすると、ミリエラよりも視線の位置が高かった。

「へぇ、風の精霊、ねぇ……」

 今までミリエラの見ていた風の精霊とは違う。今までの風の精霊は、緑色に光る丸い玉のような姿をしていた。

『娘、我と契約しろ』

「娘じゃないよ、ミリエラだよ――……どうして契約したいの?」

『そなたの側にいたいからだ――前の生の記憶を持つ者よ』

 前世のことに触れられて、ミリエラは眉間にしわを寄せた。前世のことは、あまり触れたくはないのだが。だが、ミリエラの前世のことも気づくあたり、ただの精霊ではないのかもしれない。

「……でも」

 精霊はミリエラに頬を寄せてきた。ふさふさの毛並みが、頬に触れる。

『娘、我と契約しろ。そうしたら、我がそなたを守ってやる』

「……だから、ミリエラだってば」

『娘、我に名前で呼んでほしかったらそなたも我を名前で呼べ』

「名前って……?」

 ミリエラは、風の精霊の方に手を伸ばした。その手に、精霊は鼻先を押しつけてくる。

『そなたが名をつけろ。我には、名前がないからな』

< 25 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop