天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました！

　そのため、王位継承権を失い、グローヴァー侯爵領で暮らすことになったというのは、おそらくこの国の貴族ならば大半が知っているだろう。

　ふたりの王子のうち、どちら側につくべきか。まだ幼い子供達とはいえ、未来のことを見据えて動かねばならないのが貴族だ。

「そう。ディートハルト殿下は、マナを使えるようになっただろう。その結果、王家の権力争いに動きがあったんだ」

　マナを使えるのならば、長男であるディートハルトが王位を継ぐべきだと主張する一派。

　母が亡くなり、ろくな後ろ盾もないのだから、弟王子が王位を継いだ方がいいと主張する一派。国内の貴族は、大半がどちらかの側についているそうだ。

　――ジェラルドには、まったく縁のない話だと思っていたが、思いがけず巻き込まれる形になっていたらしい。

「グローヴァー侯爵家に現れた天才少女の話は、かなり大きな話題となっている。ミリエラに近づきたがる人も多い」

「そうね。あの保冷布？　あれのおかげで、今年はとても涼しく過ごせたもの」

「それだけでなく、マナを持たない者の治療法も見つけ出した」

「……はい」