天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「じゃあ、ミリィとカークは別々に隠れよう! ディーはここで数を数えて! 三十まで!」

 ディートハルトを大きな木のところに引っ張っていき、そこでふたりの手を離す。

 護衛は遠巻きに見守っているだけだが、ここは王宮だ。心配する必要もない。

 一、二、と目を閉じ、後ろを向いたディートハルトが数を数え始める。三十までの間に、どこかに隠れなければ。

 きょろきょろと見回したミリエラは、精霊と思われる銅像の側に近寄った。この後ろに隠れたら、意外と気づかれないで済むのではないだろうか。

 いや、ここではダメだ。もっと別の場所にしなくては。

 意外性のある場所ってどこだろうなと思いながら、手足を懸命に動かす。頭が大きい分、子供は転びやすいのだ。

(……よし、ここなら)

 少し離れたところに小屋がある。その小屋の側には、いくつも箱が積まれていた。

 中には、苗のようなものが入っていたから、庭師達がどこかで作業中なのだろう。邪魔にならないよう、箱からは少し離れたところにしゃがみ込んだ。

「――三十! 探しに行くぞ!」

 遠くから、ディートハルトの叫ぶ声が聞こえてくる。

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