天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 その、とたん。

「――ミリエラ! ミリエラはどこだ?」

 不意に聞こえてきた、今まで聞いたことのない男性の声。

 視界が鮮明になってくると、土ぼこりの向こう側にひとりの男性が立っているのが見えた。
 その瞬間――世界中の時が止まったような気がした。

「……パパ?」

 ミリエラの口から茫然とした声が漏れる。

 そこに立っていたのは、生まれてから一度も会ったことのない――肖像画でしか見たことのない――父だったのだから。

「……アウレリア?」

 だが、ジェラルドはミリエラの顔をまじまじと見て、アウレリア――と母の名を呼んだ。ミリエラの瞳と、ジェラルドの瞳が正面からぶつかり合い――そして、父は慌てた様子で身を翻した。

「待って! 待って、パパ!」

 ミリエラの呼びかけに、一度足を止めかける。だが、思い直したように、再び向きを変えようとした。

「――パパ、待ってよ!」

 悲痛なミリエラの声が響く。だが、彼は振り返ろうとしなかった。

「――待って!」

 それきり、ミリエラも言葉を続けることはできなかった。

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