天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 そして、同じくらい幸せだったのは、子供ができたと知った日のこと。

 少しずつ大きくなっていくお腹に手を当て、男の子だろうか、女の子だろうかと語り合う。

 どんな名前をつけようか。そんな会話が、どうしようもなく幸せだった。

 アウレリアが実家から連れてきた侍女ニコラ。父の代からジェラルドに仕えてくれている騎士オーランドの夫婦。

 そんなふたりの間に生まれたカークの泣き声や笑い声が屋敷に響く。それは、ジェラルドが成人して以来、初めて見る生の証であった。

 このままずっと、幸せな日々が続くのだと――そう信じていたのに。

 死神は、どこまでもジェラルドの周囲の人に鎌を振り下ろすのをやめられないらしい。

 ふたりの間に最愛の娘が生まれたその日。アウレリアは命を失った。

 当代きっての錬金術師の家だ。出産に対しては、ありとあらゆる守りを固めていた。

 ――それなのに。

 ニコラが抱いている娘の方を見ている余裕もなかった。

 ただ、アウレリアの手を握り、魂を呼び戻すことができるのではないか、今にも目を開くのではないかとひたすらにさすり続ける。

< 32 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop