天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
「かしこまりました――では、私達は別館に移ります。お嬢様にお会いになりたい時は、いつでもお声をかけてくださいませ」

 自分だって、声に涙をにじませているくせに、ニコラは気丈にもそう語る。

 オーランドが、ニコラの肩に手を置くのが、視界の隅に移った。

「……すまない、ニコラ。すまない、オーランド」

 それきり、言葉を続けることはできない。娘の名前も、それきり口にすることはできなかった。

 

 娘の存在を記憶の底にしまい込もうとしながら、今まで以上に他人と接するのを避ける生活が始まった。

 魔道具の制作もやめてしまった――下手に関わったら、また誰か死ぬことになるのかもしれない。

 未練がましいと、他の人は笑うのかもしれない。

 家から追い出したくせに、ミリエラのことが気になってしかたない。

 オーランドとニコラは、そのあたりのジェラルドの気持ちを完全に理解しているようだった。雨が降らなかったら、毎日同じ時間にカークとミリエラを外遊びに連れ出す。

 雨が降った日は、遊ぶ場所が広い温室に変わるのだ。

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