天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 ――もしかしたら、ミリエラの身に何か起こったのかもしれない。

 窓から飛び出し、慌てて駆けつけてみれば――そこにいたのは、遠い昔恋をした少女とうりふたつの少女。

 巨大な白い猫を従え、こちらに不思議そうな目を向けている。

「アウレリア……?」

 思わず、つぶやいた。違うとわかっていたのに。

 違う、アウレリアの髪はくるくると渦を巻いていた。

 目の前にいる少女の髪はしなやかでまっすぐだ。

 少女は、アウレリアそっくりの大きな目を見開き――そして、次の瞬間には、彼女の口から信じられない言葉がぽろりと漏れる。

「――パパ?」

 その一言が、ジェラルドを現実へと引きずり戻す。

 そうだ、自分は父親なのだ。娘は守らなければ。

 だが、側に寄れば、娘を不幸に引きずり込みかねない。

 なおもミリエラが呼ぶのに、耳を塞ぎ、懸命にその場から歩みを進める。一度だけ振り向いてしまったのは――ジェラルドの弱さなのかもしれなかった。

 最低限、通いの使用人だけに出入りを許している本館に戻り、誰も入ってこられないよう鍵をかけた部屋に閉じこもる。

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