天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました！

第一章 呪われた娘ですが、前世の記憶に助けられています

「……ニコラ、できた！」

　子供部屋に明るい声が響いた。

　ミリエラ・グローヴァーは、自分の机に座り、一生懸命お手本を見ながら字の練習をしているころだった。

　ミリエラが頭を動かす度に、ふたつに分けて結ったストロベリーブロンドもゆらゆらと揺れる。大きな青い瞳は、真剣な光を浮かべていた。

　彼女が身に着けているのは、レースの襟がついた白いブラウスに、ピンクのスカート。可愛らしい装いである。

　足もぶらぶらとさせながら書いた五歳の少女の筆跡は、あちこち曲がりくねっていてとても読みにくいが、ニコラは微笑みながらそれを受け取った。ニコラ――ニコラ・マウアー――は、生まれた時からずっとミリエラの世話をしているミリエラの乳母である。

「上手に書けていますね、お嬢様――では、もう一枚練習してみましょうか」

　ニコラの緑色の目が柔らかく細められる。彼女の目に浮かぶのは、母の愛にも似ているミリエラを愛おしく思う気持ちだ。

「えー」

　ミリエラは、ぷくっと頬を膨らませた。練習したら、もっと上手に書けるのは知っているが、お手本を写すだけでは面白くない。