天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 扉の向こうから、ニコラの声がする。誰かと話をしているようだ。

「ミリエラ様は、こちらのお部屋です」

「ありがとう、ニコラ」

 今の声は、ジェラルドのものではないだろうか。扉が開かれ、ミリエラは目を向ける。

「――パパ?」

 そこに立っていたのは、予想の通りジェラルドだった。黒い上着が、彼の銀髪に映えている。

 けれど、ジェラルドはそこに立ち尽くしたきり、扉から中に入ろうとはしなかった。いったい、どうしてしまったというのだろうか。

 しかたがないので、ミリエラの方からジェラルドに近づく。

「パパ、どうしたの? お腹痛い?」

 そうたずねたのは、ジェラルドが胃のあたりを押さえていたからだ。ミリエラは手を伸ばし、その手に自分の手を重ねた。

「そうだね――ミリエラ。少し、ここが痛いかな」

 そうつぶやいて、困ったように笑う。

「大変! それなら、お医者様を呼ばないと、それから――パパ、ここに座って?」

 ミリエラの部屋にも、大人が座ることのできるソファが用意されている。

 ジェラルドの手を引っ張り、そこに座らせる間も、彼の手は胃のあたりを押さえたまま。

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