天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!
 普通の子供ではないとニコラ達に恐れられたくないから、前世のことは絶対に口にしないと決めている。子供のふりをするのももう慣れっこだ。

「ありがとう! お手紙、楽しみに待っていてね!」

 持ってきてもらったクレヨンを手に、画用紙に向き直る。

 まだ身体ができていないからなのか、思うように手足を動かせないことも多い。それは今も同じだった。

 頭の中ではお手本の通りに書いているつもりなのに、出来上がるのは歪な文字の列である。

 継続は力なり。字が上達したければ、練習を続けるしかない。

(ニコラには、いつもおいしい菓子をありがとうって書くでしょ。それから、オーランドにはお野菜ありがとうって)

 オーランドは本来護衛騎士のはずなのだが、外出しないミリエラの護衛では仕事などほとんどない。

 朝のうちは、侯爵家所属の騎士団と訓練をしているが、終わったあとは庭師と一緒に侯爵邸で食べる野菜を育てている。

 護衛騎士のはずなのに、違う役目を押しつけられても嫌な顔をしないできた男である。

 それから、ふたりの息子であるカーク。彼には、なんて書こうか。

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