ふたりは謎ときめいて始まりました。
3
「えっ、何?」
「いや、昼ご飯食べたら午後はどうしようかなと思って」
とっさに誤魔化すロク。
「だったらさ、買い物にでもいかない? そろそろ暑くなってきたし、新しい服が欲しいんだ」
「そういえば、中井戸さんがギフトカードくれたじゃないか。それを使えばいいよ」
瀬戸とその息子の祥司の一件。メモを見つけたことで中井戸がその真相を探ってほしいとの依頼だった。結果的には上手く解決できたが、織香や依頼者の中井戸までもが関わって、一騒ぎあっての賜物だった。
瀬戸の家から出た後、依頼料をどうすればいいかと中井戸に言われた。自分ひとりで解決できなかったロクはいらないと拒否すれば、中井戸も払わなくて済むと一瞬喜びかけた。だが、織香がそれをダメ押しした。
『逸見さん、ビジネスなんですからやはり依頼料は受け取るべきですよ』
織香がそういえば、中井戸は見栄を張る。
『そ、そう。依頼したのは僕ですから、それはちゃんと払う義務があります』
織香を意識して格好をつけていた。
『でも皆さんの助けがあったから、解決したわけで』
ロクはなんとかしてくれとちらりとミミを見た。
本来ミミが言うべき事を先に織香に言われたことで、ミミは仕事を奪われたみたいで少しむっとしている。
『ロクがしたいようにすればいいんじゃないの?』
つい意地悪になってしまう。
「おいっ」と突っ込みたいが皆の前でそれも出来ず、ロクは仕方なく屈服した。
『わかりました。それじゃ提示した通りにヨロシクお願いします』
『それじゃちょっと取ってくるから』
中井戸は自分のアパートを指差して慌てて走っていった。遠ざかる中井戸を背にロクは織香と向き合う。
『白石さん、お休みのところ本当に申し訳なかったです』
ロクが頭を下げたので、ミミも形だけはそれに習った。
『却って、楽しかったくらいです。どうかこれからも頑張って下さいね』
『有難うございます』
『それじゃ私はこれで失礼します』
織香は一礼して去っていった。角を曲がるとその姿は見えなくなり、ミミはほっとして肩の力を抜いていた。
その後、中井戸が現れ、織香が帰ってしまったことにがっかりしてしまう。
『なんで引き止めてくれなかったんだよ』
『もしかして、中井戸さんは白石さんの事が好きなんじゃ』
ミミが言うと、中井戸ははっとして慌て出した。
『いや、この間の診察のことで、お礼をきっちりといいたかったからさ』
『でも中井戸さんと白石さんって結構お似合いだよ』
ミミの言葉に中井戸の顔がパッと明るくなった。もちろんリップサービスだ。その裏には織香と上手くいってくれたら嬉しいという願望も隠れていた。
『ほんと?』
『あともうちょっと痩せたら、中井戸さんの魅力に気がつくかも。だからダイエット頑張ってね』
『うん、が、頑張ってみる。それじゃこれ』
中井戸はカードを出した。
ミミは『ん?』と顔をする。
『現金が今なくて、ギフトカードで悪いんだけど、ちゃんと三千円分入っていると思うから』
『ああ、わかりました。それじゃ頂きます』
ロクはそれを受け取った。現金を受け取るよりもいいような気がした。
ミミが訝しげにカードを見つめている。三千円がきっちり入っているのか訊きかねない様子だったったので、ロクは中井戸とそこでさよならし、さっさと家路についた。
カードにお金が入っていなくてもロクはどうでもよかった。
でもそれを確かめるにはミミと買い物にでかけるにはいい機会だ。
ミミもまたロクとデートができるとルンルン気分になっていた。
「えっ、何?」
「いや、昼ご飯食べたら午後はどうしようかなと思って」
とっさに誤魔化すロク。
「だったらさ、買い物にでもいかない? そろそろ暑くなってきたし、新しい服が欲しいんだ」
「そういえば、中井戸さんがギフトカードくれたじゃないか。それを使えばいいよ」
瀬戸とその息子の祥司の一件。メモを見つけたことで中井戸がその真相を探ってほしいとの依頼だった。結果的には上手く解決できたが、織香や依頼者の中井戸までもが関わって、一騒ぎあっての賜物だった。
瀬戸の家から出た後、依頼料をどうすればいいかと中井戸に言われた。自分ひとりで解決できなかったロクはいらないと拒否すれば、中井戸も払わなくて済むと一瞬喜びかけた。だが、織香がそれをダメ押しした。
『逸見さん、ビジネスなんですからやはり依頼料は受け取るべきですよ』
織香がそういえば、中井戸は見栄を張る。
『そ、そう。依頼したのは僕ですから、それはちゃんと払う義務があります』
織香を意識して格好をつけていた。
『でも皆さんの助けがあったから、解決したわけで』
ロクはなんとかしてくれとちらりとミミを見た。
本来ミミが言うべき事を先に織香に言われたことで、ミミは仕事を奪われたみたいで少しむっとしている。
『ロクがしたいようにすればいいんじゃないの?』
つい意地悪になってしまう。
「おいっ」と突っ込みたいが皆の前でそれも出来ず、ロクは仕方なく屈服した。
『わかりました。それじゃ提示した通りにヨロシクお願いします』
『それじゃちょっと取ってくるから』
中井戸は自分のアパートを指差して慌てて走っていった。遠ざかる中井戸を背にロクは織香と向き合う。
『白石さん、お休みのところ本当に申し訳なかったです』
ロクが頭を下げたので、ミミも形だけはそれに習った。
『却って、楽しかったくらいです。どうかこれからも頑張って下さいね』
『有難うございます』
『それじゃ私はこれで失礼します』
織香は一礼して去っていった。角を曲がるとその姿は見えなくなり、ミミはほっとして肩の力を抜いていた。
その後、中井戸が現れ、織香が帰ってしまったことにがっかりしてしまう。
『なんで引き止めてくれなかったんだよ』
『もしかして、中井戸さんは白石さんの事が好きなんじゃ』
ミミが言うと、中井戸ははっとして慌て出した。
『いや、この間の診察のことで、お礼をきっちりといいたかったからさ』
『でも中井戸さんと白石さんって結構お似合いだよ』
ミミの言葉に中井戸の顔がパッと明るくなった。もちろんリップサービスだ。その裏には織香と上手くいってくれたら嬉しいという願望も隠れていた。
『ほんと?』
『あともうちょっと痩せたら、中井戸さんの魅力に気がつくかも。だからダイエット頑張ってね』
『うん、が、頑張ってみる。それじゃこれ』
中井戸はカードを出した。
ミミは『ん?』と顔をする。
『現金が今なくて、ギフトカードで悪いんだけど、ちゃんと三千円分入っていると思うから』
『ああ、わかりました。それじゃ頂きます』
ロクはそれを受け取った。現金を受け取るよりもいいような気がした。
ミミが訝しげにカードを見つめている。三千円がきっちり入っているのか訊きかねない様子だったったので、ロクは中井戸とそこでさよならし、さっさと家路についた。
カードにお金が入っていなくてもロクはどうでもよかった。
でもそれを確かめるにはミミと買い物にでかけるにはいい機会だ。
ミミもまたロクとデートができるとルンルン気分になっていた。