あやかし戦記 見えない糸
「お前らはどうする?呪術師となんて戦ったことがないだろ。ここでヴィンセントが帰ってくるのを待つか?」

その言葉に、二人はすぐに「いいえ、一緒に行きます!」と返す。

「大人しく待ってるなんて、俺らしくないしな」とレオナード。

「呪いより、ヴィンセントを失う方がずっと怖いので」とイヅナ。

ヴィンセントは、幼い頃からずっと一緒にいた家族のような存在だ。呪術師と戦うことよりも、最悪の事態を考えた時の方が二人の体は震えていた。二人にとってヴィンセントは、それほど大きな存在なのだ。

「事態は一刻を争う。今すぐ出発するぞ」

ツヤの言葉に、全員が大きく頷いた。



五人は馬を走らせ、アリスとヴィンセントが登った山道を登っていく。二人で登った時より日は高くなっているのだが、山の中は薄暗くて薄気味悪い。

「……大声は出すなよ。そして警戒を怠るな」

ツヤがそう命じ、「ツヤに命令されるなんてね〜」とギルベルトが呟く。ツヤが彼を睨み、ギルベルトはいつものように笑う。ツヤの説教がきちんと届いているようだ。
< 23 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop