惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 私はゆっくり体を起き上がらせ、ルーカスと向き合う様に座り直した。

「とりあえず待ってちょうだい。今は惚れ薬の効果で好きな気持ちが強いかもしれないけど・・・出来ればその効果が切れるまでは待ってほしいの。それか・・・解毒剤が手に入るまで・・・」

 私の言葉に、ルーカスの青い瞳が揺れた。
 惚れ薬にはだいたい効果時間とか解毒剤が存在するはず・・・あくまでも小説の知識だけど!

「・・・そのまま効果が切れなかったら・・・?」

 そう聞いてくるルーカスは少し切なそうな表情をしていた。
 まるで惚れ薬の効果が切れてほしくないと思っているかのようで、私は少しドキリとした。

 効果が切れなかったら・・・?そんなことがあるのだろうか・・・?

 ルーカスが真っ直ぐに私を好きだと伝えてくれる・・・今のこの状況ですら、本来ならば信じ難くて夢の様な出来事なのに・・・この夢から醒めることなく彼が私を好きで居続けてくれるなんて事がありえるのだろうか・・・?

 彼がもしも・・・最初から私の事を好きでいてくれたのだとしたら・・・?

 今のルーカスに聞いても、事実はどうであれ、好きの一点張りになるだろう。
 今はそれを確認する術は無いけれど・・・でももしかしたら・・・本当に・・・?
 
 そんな疑問は小さな期待となり、私の胸を暖かくした。

「そうね・・・とりあえず1ヶ月・・・1年は待って・・・それでも効果が切れなかったら、その時は・・・考えましょう」

 僅かに見え始めた希望に、私は高まる気持ちをどうにか落ち着けている。
 しかしルーカスは私の言葉を聞いて、明らかにショックを受けている様だ。

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