惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 で・・・もう一つ気になってる事がある。

 聞くのが凄く怖いのだけど・・・。

「ユーリ・・・もしかしてだけど・・・ルーカスがエリーゼ嬢に送った手紙・・・君が盗んだの?」

「・・・・・・」

 ユーリは暫く真剣な表情で目を伏せ、口に手を当てて何かを考え込んでいるようだった。

 なんだかさっきの話を聞いてると、あたかもユーリが手紙の内容を知っている様な口調だったが・・・。
 頼む・・・違うと言ってくれ・・・あれは全部でたらめだったと・・・。

 もし仮に手紙の中身を見たのだとしても、それはたまたま偶然で、何か不思議な現象が起きて君の元に間違えて届いたとか・・・もうどんなめちゃくちゃな嘘でもいい・・・。
 信じるから・・・僕は君の言うことを信じるから・・・!!

「うん☆てへっ☆」

 ユーリは急にイタズラした子供の様に、片目を瞑ってペロッと舌を出した。

 ・・・・・・そうか。

「うわああああああ!!全部君のせいじゃないかああああああ!!!なにさっきまで私は何も悪くないみたいな顔してたんだよおおおお!!」

 僕の絶望的な叫びにもユーリは動じることなく、再び玉座に座り余裕の笑みを浮かべている。

「だから今、そのせいで拗れてしまったあの二人の関係をリセットしてあげたって訳よ。エリーゼの迷推理(めいすいり)が良い仕事をしてくれたわね」

 関係をリセット・・・って・・・。
 ああ、だから君はエリーゼ嬢のめちゃくちゃな話を否定しなかった訳か・・・。

「そうか・・・ちなみに僕は今、僕と君の人生がリセットされそうな危機に直面しているよ・・・」

 ユーリが・・・手紙を盗んだせいで・・・。
 ・・・この事実は墓場まで持っていこう・・・。

 だけどやり方はどうであれ、ユーリの言うことも一理ある・・・。
 あの二人はどう見ても両想いなはずなのに、あと少しの所でお互いが一歩引いてしまう。
 その姿を幾度となく見てきた僕は、この二人は両想いに気付いたら死んでしまう呪いでもかかってるのかと何度思ったことか・・・。

 何か二人の関係が変わる決定的な出来事でも起きない限り、一生あのままだったかもしれない。
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