惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 そして一番気になってるのは、やっぱりあの薬の存在だ・・・。
 
「・・・・・・で・・・ユーリ・・・惚れ薬は君が用意したのかい?」

「ええ」

 ユーリは目を細めて、僕を挑戦的な目で見つめている。
 エリーゼ嬢よりも少し淡い新緑色の瞳は、エメラルドというよりペリドットに近い。

「もちろん、中身は偽物なんだろ?」

「・・・ふふ・・・さすがに分かるわよね」

 僕の言葉にユーリは変わらぬ笑顔を見せているが、少し残念そうにも見える。

「ああ、君がもし惚れ薬なんてものを手に入れたなら、人に譲るはずがないからね」

「そうね、まずは皇帝陛下に一服盛ってるわ」

 その言葉に俺の耳に処刑台のギロチンが落ちてくる様な幻聴が聴こえ、思わず首を両手で押さえて繋がっているか確認してしまった。

「・・・君といるとたまに首の感覚がなくなるよ・・・」

 皇帝陛下に一服盛るとか、皇室の騎士団の人間に聞かれたら間違いなく首が飛んでいくだろう。

「それじゃあ、なんで二人とも、惚れ薬で相手が自分を好きになってると思ってるんだ?」

 僕は昨日、ルーカスから「エリーゼに惚れ薬を使った」と聞かされた。
 しかし、さっきエリーゼ嬢は「ルーカスが惚れ薬を飲んだ」と言っていた・・・。

 僕の認識では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと思っていたのだが・・・。

「ふふっ・・・簡単な事よ・・・。ルーカスにはエリーゼが知ってる惚れ薬の使い方とは逆の方法を教えたのよ。・・・あの二人も馬鹿よね。たった3秒見つめ合うだけで、相手が自分の事をどう思ってるかなんて知ることが出来たのに・・・」

 そう言ったユーリは、ニヤリ・・・と、まるでイタズラが成功した子供の様な笑みを浮かべていた。
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