惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「エリーゼも惚れ薬の事は、数々のロマンス小説で知識としては知ってるわ。()()()()()使()()()()()。だから、自分の気持ちは惚れ薬によるものだとすぐに分かるはずよ。だけどもう好きになってしまった気持ちはどうにもならない・・・。気持ちの赴くままにあなたを愛するはず・・・。なんならそのままヤッちゃっても許してくれるんじゃない?」

「な・・・なんだとぉ!?」

 思わず叫んでしまったのは、最後のフレーズに反応した訳では決して無い。
 つい感情が高まってしまったが・・・一度冷静になる必要があるな・・・。
 さっきから心拍数が半端ない。

 俺は深くゆっくり深呼吸しながら頭を冷やす作業に徹する中、ユーリが再び惚れ薬をチラつかせながら話しかけてきた。

「そうね・・・たとえば・・・この惚れ薬を、私の名前でエリーゼに送る・・・。惚れ薬って書いてあるから、すぐ何か分かるでしょう。魔法を信じてるエリーゼなら、この惚れ薬をきっと本物だと信じるはずよ。小説の世界と現実の世界をごちゃ混ぜにしちゃってる子だしね」

 ・・・そうだな。そこは否定しない。

「でもさすがにすぐには使わないでしょうね。それなりに悩むはずよ。・・・そんな時にあなたがエリーゼの家を訪ねる。そしてエリーゼの隙をついて、この惚れ薬を飲めばいいのよ」

「・・・いや・・・おかしいだろそれは。なんでエリーゼ宛に送られたものを俺が飲む事になるんだ?しかもこれ惚れ薬ってしっかり書いてあるしな」

「そこはアンタが適当に言い訳を考えなさい。エリーゼなら多少無茶な言い分でもすんなり受け入れてくれるわよ。それにあの子、アンタの事少し変な奴って思ってるし」

 ・・・そうだな。そこも否定しない。

「・・・ていうか、これ結局エリーゼを騙す事にならないか・・・?」

「そうね・・・こっそり飲んで薬の存在を知らせずに惚れさせるか、()()目の前にあった惚れ薬を飲んで、本人にも分かる様に惚れさせるか・・・罪悪感の大きさの違いだけね・・・好きな方を選びなさい?」

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