惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 ・・・つまり、どっちにしろ惚れ薬を飲んだ時点でエリーゼを騙してる事になるんだな・・・。
 そんな事をしたら、やはりエリーゼに嫌われるんじゃないか・・・。

 ・・・いや、嫌われるけど惚れ薬の効果で俺の事を好きになる・・・?
 好きになってもらうために一度嫌われる・・・?なんだこれややこしいな。
 ・・・て、俺も何を真面目に考えているんだ・・・?

「とりあえず、私はこれをエリーゼに送るつもりよ。どうせアンタの事だから、何かしら手を打つつもりかもしれないけど・・・エリーゼの事も考えてあげなさい。もういくつだと思ってるのよ?彼女の幸せを考えるなら・・・何をするべきかをね・・・ご馳走様」

 ユーリはそう言い残して立ち上がり、小瓶を持って踵を返すと軽やかな足取りで部屋から出て行った。

 残された俺は、椅子にもたれると大きくため息をついて頭を抱えた。

 ユーリが立てた計画はめちゃくちゃだ・・・。
 こんな馬鹿げた話に乗っかるなんてどうかしている。
 もう少しマシな方法があれば・・・いや、エリーゼに惚れ薬を使うなんて・・・やっぱり俺には出来ない。
 ユーリの話は忘れよう・・・。

 しかし・・・エリーゼの幸せ・・・か・・・。
 出来ることなら俺が幸せにしたい・・・だが・・・俺が彼女を幸せに出来るのか・・・?

 それでも・・・ただひとつ言えることは、他の誰にもエリーゼを渡したくない・・・。
 たとえ、エリーゼが好きな相手であってもだ・・・。

 ・・・やはり今度こそ・・・エリーゼに俺の気持ちを伝えよう。

 脳裏にチラつくトラウマを振り払い、俺は何度繰り返したか分からない決意を胸に秘めて立ち上がった。

 ・・・それにしても、先程からすっかり惚れ薬の存在を信じてしまっている自分にも呆れるな。
 どうもエリーゼの事になると、まともな判断が出来なくなってしまう・・・気を付けなければいけないな。

――――まさか本当にあの惚れ薬を使うことになるとは・・・この時の俺は微塵にも思っていなかった。
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