惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 俺が机に向かっている時、ふと人の気配を感じて顔をあげると、開け放っていた窓の淵にエリーゼは立っていた。
 そよ風で彼女の長い髪が波打つようにふわふわと揺れ、差し込む日差しに照らされエメラルドの様な輝きを放つ瞳、慈愛に満ちた様な笑顔・・・。
 その姿を見て、天使が俺の部屋に舞い降りてきたのかと錯覚した。

 俺はこの時、完全にエリーゼに一目惚れしてしまった。

 誰だろう・・・木を登ってここに来たのか?
 俺に会いに来てくれたのか・・・?

 うるさい程にドキドキと胸が高鳴る音に戸惑い、つい目を逸らしてしまったが、このまま彼女を帰したくなかった。

「木登り教えて!!」

 何故そんなことを言ってしまったのか、自分でもよく分からなかったが、とりあえずはそれがきっかけになり、彼女と親しくなることが出来た。

 エリーゼに教わった木登りは純粋に楽しかった。
 首都では木に登るなんて遊びは出来なかったし、マナーが悪いからしてはいけないと教えられてきた。
 初めての経験に、最初は思う様に出来なかったが、てっぺんまで登った時の達成感は気持ちが良かった。
 エリーゼも木登りだけは抜群に上手かった。
 何回も競走したが、結局1度も勝つことは出来なかった。

 そして木登りを教えてもらう代わりに、俺はエリーゼに勉強を教える事になった。

 軽い気持ちで引き受けたが、これが予想以上に大だった・・・。
 彼女は年齢よりもレベルの低い課題をいつもさせられていたが、それでも彼女の解答はいつも間違えていた。

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