惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「エリーゼ・・・問題をよく読んでみようか。『クッキーが10個あります。兄はクッキーを2個、弟はクッキーを3個食べました。残りは何個でしょうか?』さあ、答えはなんだ?」
「・・・この問題おかしいわよ。なんでお兄さんの食べたクッキーの方が少ないの?年齢的にもお兄さんの方が多く食べても良いと思うの。クッキー2個では足りないわ・・・4個食べさせてあげましょう!だから・・・余ったクッキーは3個ね」
そう言うと、エリーゼは計算式を書くスペースに「お兄さんは4個食べたのよ」と書いた後、答えに3と記入した。
「・・・そうだな・・・。この弟は体があまり大きくないんだ。兄は弟に大きくなってほしくて、少しでも多く食べて欲しかったんじゃないかな?」
「・・・!なるほど・・・!!じゃあ弟にはクッキーを5個・・・いえ、6個あげましょう!お兄さんは4個、弟は6個・・・残ったクッキーは0個ね!」
「なぜ増やす・・・?・・・じゃあ、こっちの問題はどうだ?『お母さんと子供は1個ずつパンを買いました。全部で何個買ったでしょうか?』で、なんで答えが3個になるんだ?」
「だってお父さんにも買ってあげないと可哀想でしょ?お父さんのパンが無いじゃない!」
「・・・そうだな・・・もしかしたら、この家族にはお父さんが居ないのかもしれないな・・・。」
「・・・!!そんな・・・・・・じゃあ、おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に住めばいいわ!!答えは4個ね!!」
「なぜ増えていく・・・?」
エリーゼの解答はいつもめちゃくちゃだった。
正そうとすればするほど、正解とかけ離れていった。
だけど、エリーゼはいつも優しかった。
実際には存在しない、ただの例文として使われるだけの家族ですら、幸せになってほしいと彼女は願っていた。
そんな彼女の話を聞いているのは心地よかった。
何の打算も無い彼女の純粋な優しさに、俺の荒んだ心は癒されていった。
だから俺は彼女の答えを否定する事をやめた。
「そうだな・・・エリーゼの答えが正解だ」
どうかそのままのエリーゼでいてほしい・・・。
そんな彼女を否定する存在から、俺は守る事を決めた。
「エリーゼ・・・なんで計算式を書くところに謎の文章を書くんだ・・・?なぜ問題の内容を勝手に変えてしまうんだ・・・?」
エリーゼの答案用紙を見た教師が戸惑いの表情で詰め寄ってきたところを、俺はすかさず間に入った。
「先生、エリーゼは間違っていた箇所を正したのです」
「いや・・・これ間違い探しをしろと言ってるわけじゃないからな?ここには計算式を書けと言ってるんだ」
苛立ちを隠せなくなってきている教師を前にしても、俺は少しも引く気は無い。
エリーゼは何も間違えてない。
彼女の解答は俺が守る。
「エリーゼは幸せの方程式をここに書いたんだ」
「おい、上手いこと言うな」
「先生、時間の無駄だからさっさと進めて」
呆れ返ったユーリの声で、教師は眉をピクピクさせながら、諦めた様にエリーゼの解答にマルを付けていった。
そんなやり取りはその後も何度か続いた。
「ルーカスはいつも先生と何の話をしているの?」
俺と教師が討論を終えた後、エリーゼは不思議そうに俺に聞いてきた。
「この世の不条理な現実を正すための討論をしているんだ」
「・・・あはは!ルーカスおもしろーい!」
絶対に何も理解していないエリーゼは無邪気に笑っていたが、それこそ俺が守りたいものだった。
彼女の笑顔が守れてよかった。
やがて、エリーゼの解答用紙は常に満点になった。
それがたとえ、本来の答えと違っていたとしても・・・。
「・・・この問題おかしいわよ。なんでお兄さんの食べたクッキーの方が少ないの?年齢的にもお兄さんの方が多く食べても良いと思うの。クッキー2個では足りないわ・・・4個食べさせてあげましょう!だから・・・余ったクッキーは3個ね」
そう言うと、エリーゼは計算式を書くスペースに「お兄さんは4個食べたのよ」と書いた後、答えに3と記入した。
「・・・そうだな・・・。この弟は体があまり大きくないんだ。兄は弟に大きくなってほしくて、少しでも多く食べて欲しかったんじゃないかな?」
「・・・!なるほど・・・!!じゃあ弟にはクッキーを5個・・・いえ、6個あげましょう!お兄さんは4個、弟は6個・・・残ったクッキーは0個ね!」
「なぜ増やす・・・?・・・じゃあ、こっちの問題はどうだ?『お母さんと子供は1個ずつパンを買いました。全部で何個買ったでしょうか?』で、なんで答えが3個になるんだ?」
「だってお父さんにも買ってあげないと可哀想でしょ?お父さんのパンが無いじゃない!」
「・・・そうだな・・・もしかしたら、この家族にはお父さんが居ないのかもしれないな・・・。」
「・・・!!そんな・・・・・・じゃあ、おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に住めばいいわ!!答えは4個ね!!」
「なぜ増えていく・・・?」
エリーゼの解答はいつもめちゃくちゃだった。
正そうとすればするほど、正解とかけ離れていった。
だけど、エリーゼはいつも優しかった。
実際には存在しない、ただの例文として使われるだけの家族ですら、幸せになってほしいと彼女は願っていた。
そんな彼女の話を聞いているのは心地よかった。
何の打算も無い彼女の純粋な優しさに、俺の荒んだ心は癒されていった。
だから俺は彼女の答えを否定する事をやめた。
「そうだな・・・エリーゼの答えが正解だ」
どうかそのままのエリーゼでいてほしい・・・。
そんな彼女を否定する存在から、俺は守る事を決めた。
「エリーゼ・・・なんで計算式を書くところに謎の文章を書くんだ・・・?なぜ問題の内容を勝手に変えてしまうんだ・・・?」
エリーゼの答案用紙を見た教師が戸惑いの表情で詰め寄ってきたところを、俺はすかさず間に入った。
「先生、エリーゼは間違っていた箇所を正したのです」
「いや・・・これ間違い探しをしろと言ってるわけじゃないからな?ここには計算式を書けと言ってるんだ」
苛立ちを隠せなくなってきている教師を前にしても、俺は少しも引く気は無い。
エリーゼは何も間違えてない。
彼女の解答は俺が守る。
「エリーゼは幸せの方程式をここに書いたんだ」
「おい、上手いこと言うな」
「先生、時間の無駄だからさっさと進めて」
呆れ返ったユーリの声で、教師は眉をピクピクさせながら、諦めた様にエリーゼの解答にマルを付けていった。
そんなやり取りはその後も何度か続いた。
「ルーカスはいつも先生と何の話をしているの?」
俺と教師が討論を終えた後、エリーゼは不思議そうに俺に聞いてきた。
「この世の不条理な現実を正すための討論をしているんだ」
「・・・あはは!ルーカスおもしろーい!」
絶対に何も理解していないエリーゼは無邪気に笑っていたが、それこそ俺が守りたいものだった。
彼女の笑顔が守れてよかった。
やがて、エリーゼの解答用紙は常に満点になった。
それがたとえ、本来の答えと違っていたとしても・・・。