惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 12歳の時、俺は無事に首都の名門校に主席で合格し、学費免除の権利を得た。
 もしも首席合格が無理だった時に格好悪いからと、母親に口止めしていたから、村の人間は俺がそんな試験を受けに行っていたことすら知らなかった。

 あとはエリーゼに自分の想いを告白して、いつか貴族として地位を確立したら迎えに行くと伝えるだけ・・・・・・ただそれだけの事だったのに・・・。

 俺はどうしても彼女に自分の気持ちを伝えることが出来なかった。

 12歳になり、少女から少しずつ女性らしくなっていくエリーゼを、俺は異性として強く意識する様になっていた。
 近寄りすぎると尋常じゃ無いくらい動悸がして、何も考えられなくなる。
 その綺麗な瞳で見つめられると、何も言葉が出なくなり、ずっと見ていたいはずなのに、ついその瞳から目を逸らしてしまう。

 今日こそ伝えよう・・・今日こそ・・・今日こそ・・・・・・何度繰り返したか分からない決意はズルズルと先延ばしにされて行った。

 そんな事をしているうちに、首都へ行く日まであと1週間と迫っていた。
 エリーゼと離れる日が近い・・・その事にな俺は焦っていた。

 その日は、村の子供達と数名の大人で少し遠出のピクニックをする事になった。

 俺はエリーゼと二人きりになって、今度こそ告白しようと決意していた。
 山道に不慣れなふりをして最後尾につくと、わざと皆の列から離れる様に歩いた。
 エリーゼはいつも俺が孤立しそうになると傍に来て寄り添ってくれるから・・・それはエリーゼと二人で居たくて、俺がよく使う手段だった。
 案の定、エリーゼは俺の傍に来て、声援を送ってくれたり、歩く俺を後ろから押してくれたりと、一生懸命応援してくれた。

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