惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 エリーゼ・・・ずっと一緒にいてくれると約束してくれたじゃないか・・・。
 ああ・・・あの時の約束は・・・小指と共に消えて無くなってしまっていたのか・・・。

 もっと早くエリーゼに会っていれば良かった・・・。
 直接彼女の無事を確認し、約束をもう一度結んでいたなら・・・。
 ・・・自分の気持ちを真っ直ぐ伝える事が出来ていたら・・・。

 それっぽい言い訳を並べて彼女への告白を避け続けてきた。
 結局、俺は彼女に拒絶される事が怖かったのだ・・・。

 俺は何も変わっていない。
 情けなく・・・酷く格好悪い・・・あの時のまま・・・。

 彼女の好きなロマンス小説に出てくるような王子様になんて、俺はなれない・・・。





 過去を回想する俺の耳に、突然エリーゼの声が聞こえた気がして俺はハッと我に返った。
 いつの間にか、俺は村に隣接する森にまで来ていた。

 その時、再びエリーゼの笑い声が聞こえてきた。
 誰かと話をしているのだろうか・・・?
 その声を頼りに先へ進むと、彼女とよく遊んだ大樹のある場所へと辿り着いた。

 木の下で座っているエリーゼの隣には・・・見知らぬ青年が座っていた。

 エリーゼ・・・誰だそいつは・・・。

 かつての俺の居場所だった彼女の隣に座る男を見て、冷静でいられるはずなど無かった。
 
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