惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
0:ルーカスの決意(ルーカスside)
6年前・・・エリーゼに拒絶された俺は、何もかもがどうでも良くなり、仕事を全て投げ出して自分の寝室に引き篭った。
エリーゼの左手の傷や、悲しみに暮れる表情が脳裏に焼き付き、満足に眠る事も出来ず悪夢にうなされる日々・・・全てを忘れてしまいたくて、好きでもない酒に身を委ねた。
戦場ではあんなにも生き残る事に執着していたのに、もはや生きる理由すら見失っていた。
堕落した生活を繰り返し、それが1ヶ月経った頃には、俺がそれまで積み上げてきたものは雪崩のように崩れ始めていた。
数々の事業は倒産寸前まで追い込まれ、俺に見切りをつけて辞めていく従業員や使用人達もいた。しかし、ダンをはじめとする一部の人間は、そんな俺でも見放さないで居てくれていた。
そんな時に、突然ユーリが俺の寝室へズカズカと入ってきた。
蔑む様な視線を俺に向けて腕を組むと、めんどくさそうに口を開いた。
「ねえ、アンタいつまでそうしてるつもりなのよ?」
「・・・」
「プロポーズは出来たの?出来なかったの?」
「・・・」
空の酒瓶が転がるベッドに寝そべり、何の反応も示さない俺に苛立ったのか、ユーリは長く深いため息をついた。
「ねえ・・・私達の村に住んでたライオスって子、覚えてる?彼、今は北の辺境伯の養子になったみたいなんだけど・・・あなたがプロポーズに失敗したって噂を聞いて、成人したらエリーゼにプロポーズするって息巻いてたわよ。・・・まあ、今のアンタには関係ないみたいだけど・・・。じゃあ、私は帰るから」
ユーリは一方的に言葉を並べると、さっさと寝室から出て行った。
長い間まともに機能していなかった俺の頭は、ユーリの言葉をすぐに解釈出来ずにいた。
ライオス・・・?・・・ああ、そんな奴もいた気がするな・・・で?・・・エリーゼにプロポーズするって・・・?
そうだな・・・こんな俺なんかよりも、他の男と結婚した方がエリーゼにとっても良いだろう・・・。
「なんだと・・・?」
納得しようとする頭を拒絶するかのように、その言葉は俺の口から放たれた。
少しずつ頭の中を血が通い始め、冷え固まっていた脳がジリジリと熱を発し出した。
他の男と結婚・・・?エリーゼが・・・?俺以外の男と・・・?
その熱は鳩尾にまで広がり、焼ける様な熱さに顔を歪めた。
エリーゼと顔がボヤけた男が仲睦まじく寄り添う姿を想像した俺は嫌悪感から吐き気を催し、苛立ちで噛み締めた唇からは鉄のような風味が滲みだした。
「駄目だ・・・それだけは許さない・・・」
力を入れても思うように動かない体に鞭を打って起き上がり、気力だけでベッドから立ち上がった。
その日、俺は1ヶ月ぶりに寝室を出た。
エリーゼの左手の傷や、悲しみに暮れる表情が脳裏に焼き付き、満足に眠る事も出来ず悪夢にうなされる日々・・・全てを忘れてしまいたくて、好きでもない酒に身を委ねた。
戦場ではあんなにも生き残る事に執着していたのに、もはや生きる理由すら見失っていた。
堕落した生活を繰り返し、それが1ヶ月経った頃には、俺がそれまで積み上げてきたものは雪崩のように崩れ始めていた。
数々の事業は倒産寸前まで追い込まれ、俺に見切りをつけて辞めていく従業員や使用人達もいた。しかし、ダンをはじめとする一部の人間は、そんな俺でも見放さないで居てくれていた。
そんな時に、突然ユーリが俺の寝室へズカズカと入ってきた。
蔑む様な視線を俺に向けて腕を組むと、めんどくさそうに口を開いた。
「ねえ、アンタいつまでそうしてるつもりなのよ?」
「・・・」
「プロポーズは出来たの?出来なかったの?」
「・・・」
空の酒瓶が転がるベッドに寝そべり、何の反応も示さない俺に苛立ったのか、ユーリは長く深いため息をついた。
「ねえ・・・私達の村に住んでたライオスって子、覚えてる?彼、今は北の辺境伯の養子になったみたいなんだけど・・・あなたがプロポーズに失敗したって噂を聞いて、成人したらエリーゼにプロポーズするって息巻いてたわよ。・・・まあ、今のアンタには関係ないみたいだけど・・・。じゃあ、私は帰るから」
ユーリは一方的に言葉を並べると、さっさと寝室から出て行った。
長い間まともに機能していなかった俺の頭は、ユーリの言葉をすぐに解釈出来ずにいた。
ライオス・・・?・・・ああ、そんな奴もいた気がするな・・・で?・・・エリーゼにプロポーズするって・・・?
そうだな・・・こんな俺なんかよりも、他の男と結婚した方がエリーゼにとっても良いだろう・・・。
「なんだと・・・?」
納得しようとする頭を拒絶するかのように、その言葉は俺の口から放たれた。
少しずつ頭の中を血が通い始め、冷え固まっていた脳がジリジリと熱を発し出した。
他の男と結婚・・・?エリーゼが・・・?俺以外の男と・・・?
その熱は鳩尾にまで広がり、焼ける様な熱さに顔を歪めた。
エリーゼと顔がボヤけた男が仲睦まじく寄り添う姿を想像した俺は嫌悪感から吐き気を催し、苛立ちで噛み締めた唇からは鉄のような風味が滲みだした。
「駄目だ・・・それだけは許さない・・・」
力を入れても思うように動かない体に鞭を打って起き上がり、気力だけでベッドから立ち上がった。
その日、俺は1ヶ月ぶりに寝室を出た。