惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 子供に恵まれなかった北の辺境伯は、3人の養子を引き取り、一番優秀な人物に爵位継承権を譲る事を決めている。
 継承権を獲るためには成人を迎える今こそ、辺境伯や世間に対して、自身の能力を知らしめなければならない時期のはずだ。

「そうだね・・・。僕はまだ爵位継承権を獲ていない。今日にもここを出発しなければいけない。・・・だけどエリーゼ姉さんに相応しくないのはルーカス兄さんも同じでしょ?恋人になるのは諦めて保護者にでも転向したの?」

「それも悪くないな。いずれにしろ、エリーゼを守る事も出来無い男に譲る気は無い。少なくとも俺を倒せる腕と、俺以上の財力と地位は持ってないと駄目だ」

 たとえ条件を満たしていても譲る気は一切無いが。
 ライオスは心底呆れた様に頭を頭を押さえてため息をついた。

「そんな条件を満たせる男がそう居るはずないだろ・・・。ねえ、ルーカス兄さんはそれでエリーゼ姉さんを守ってるつもりなの?エリーゼ姉さんに届くはずだった恋文を勝手に処分したのも、エリーゼ姉さんに相応しくない男だと判断したから?」

「そうだ」

「未だに首都に上がる花火は魔法使いの魔法だなんて信じさせてる事も?売り物にもならない物を仕事と偽って作らせ続けている事も?」

「・・・ああ・・・全てはエリーゼの笑顔を守るためだ」

 魔法は実は存在しない、だなんて知ったら悲しむだろ・・・。
 刺繍だって・・・彼女が仕事をしたがっていると聞いたから・・・。

 ライオスは変わらず笑みを浮かべているが、その瞳から僅かに怒りを読み取ることが出来た。

< 145 / 212 >

この作品をシェア

pagetop