惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「・・・うわぁ!!?」

 ようやく俺の存在を認識したのか、エリーゼは飛び跳ねる様に驚いた。

「ルーカス!いつの間に入って来たのよ!!?」

「・・・ついさっきだが・・・入る前に(かなり控えめに)ノックはした」

 エリーゼに追及され、俺は目線を逸らしたままの状態で答えた。
 ポーカーフェイスには自信があるが、うまく出来ているだろうか・・・。
 俺はちらりとエリーゼの顔を伺うと、エリーゼはハッと息を飲み込み慌てたように口を開いた。

「って、私が返事してないんだから、勝手に入ってきちゃ駄目でしょうが!!ちゃんと返事があるまで待ちなさいよ!!」

「一応待ったんだがな・・・1秒程」

 ダンには部屋に入る時にいちいちノックをするなと言い聞かせているが、さすがの俺もエリーゼの家に無断で入ったりはしない。
 俺が来たのを知って惚れ薬を隠されてしまう可能性を考え、少しずるい手を使わせてもらったが・・・さすがに幻滅しただろうか・・・?

 エリーゼは深いため息をつくと、呆れた様に口を開いた。

「それを待ったとは言わないでしょうが・・・ほんと、せっかちなんだから・・・」

 まさかこんな所で俺のせっかちな性格が役に立つとは・・・。

「とりあえず・・・依頼の品を取りに来たのよね?ちょっと待ってて」

「ああ」

 エリーゼはソファから立ち上がり、その場を離れた。
 俺の目の前のテーブルの上には惚れ薬が主張するように置かれている。
 まさかこんなに早くこれを手にするチャンスがやってくるとは・・・
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