惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
2:早く結婚したい(ルーカスside)
「ねえ、ちょっと・・・ちょっと待って・・・」

 エリーゼがあたふたと声をかけてきて、俺はハッと我に返った。
 ・・・てっきりこのまま結婚を承諾してくれると思ていたのだが・・・
 エリーゼは顔を赤らめながら俺から目を逸らし、困った様な複雑な表情をしている。

 そうか・・・エリーゼも俺が惚れ薬を使った効果で、俺の事を好きになったという事を自覚しているんだったな・・・。

 だが・・・すまないエリーゼ・・・俺もこのチャンスを逃す訳にはいかない。このまま畳み掛ける・・・!

「待たない。こういう事は早い方がいい。今すぐ結婚しよう」

 俺の手から逃れようとするエリーゼの手を逃がさないように、ギュッと力を込めた。

 どうか・・・俺の元から離れて行かないでくれ・・・

 そう訴えかけるように彼女の瞳に(すが)った。
 そんな俺をエリーゼは戸惑うように見つめ返した。
 その瞳はフルフルと震えていたが、しばらくすると何か迷いが消えたかのようにキッと鋭くなり、エリーゼはその瞳を俺に向けながらゆっくりと息を吸いこんだ。

「ルーカス・・・あなたさっき惚れ薬を飲んだわよね?惚れ薬がどんな薬か知ってる・・・?」

「あ・・・ああ・・・知っている」

 エリーゼの言葉に俺は動揺を隠せず、握っていた彼女の手を離してしまった。
 先程まで俺の手の中にあった彼女のぬくもりが、溶けていくように失われた。
 その喪失感から、俺は脱力する様にソファーに腰を落とした。

 彼女は今どんな顔で俺の事を見ているのだろうか・・・気になるものの、その表情を確認する勇気はない。

「やはり・・・怒ったか・・・?」

 勝手に惚れ薬を飲み・・・勝手に彼女の心を手に入れた・・・。
 今更ながら、自分の愚かな行為に対する嫌悪感が怒涛のように襲ってきた。
 恐る恐るエリーゼを見ると、納得いかないような表情でジトッとこちら睨んでいる。

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