惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「ルーカス!!ここにあったあの木が・・・切られちゃってるの!!なんで!!?盗まれちゃったのかな!!?」

 私は差し伸べられた手ではなく、足を掴んで訴えかける様に問いかけた。

 しかしルーカスは特に驚く様子も無く、フッと笑い、私が足を掴んでいる手をギュッと優しく握った。

「落ち着けエリーゼ。この大樹を切ったのは、俺だ」

「・・・・・・は?」

 私はルーカスが何を言っているのか理解出来ず、頭の中は「?」で埋まっていった。

 ルーカスは馬から降りて、手綱を近くの木に括りつけに行った。
 その言葉を理解したのは、ルーカスが再び私の目の前にやってきてからだった。

「・・・・・・はああ!!!?切ったですって!?なんでよ!?なんで切っちゃったのよ!?」

 私の大事な心の拠り所だったのに!!
 ルーカスも私がこの木をどれだけ大事にしていたか分かってたはずなのに!
 それに・・・ルーカスにとっても大事な場所であってほしかった・・・それが・・・まさか彼の手によって失ってしまうなんて・・・

 この森の所有権はルーカスが大金を払って手にしたと聞いていた。
 それでも今まで通り自由にしてくれて構わないと言ってくれていた。
 だけど・・・どんな理由であろうと、なんの相談も無しにこの木を切ってしまうのは、いくらなんでも酷すぎる。

 私は涙をにじませた目でルーカスを睨みつけた。
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